■イラストメイキング■


ここでは、-S-の描く絵の作業過程を書いています。
あくまで、下書き、ペン入れ、着彩などの手順を説明しているだけなので、ツールの機能等の説明はないに等しいです。
また、ソフトはCLIP STUDIO PAINT(以下、CSP)を使っていますが、 基本的にはブラシでの描き消しのみなので、どのソフトでも作業手順は大差ありません。
CGを描くのが初めてでキャラを描きたい方、描き方を忘れやすい私のための参考用としてご利用ください。



まずは紙質のセッティングから。
私の場合、手描きっぽい描き心地じゃないとあまり描く気が起きないというのと、
この紙目で雑な塗りをごまかすという二つの理由で、ほとんどの絵に紙目を付けてます。
実際、上の二つの画像を見比べても、質感が全く違う事が分かるかと思います。


CSPの場合の紙質を付ける手順としては、


1、[素材]ウィンドウから紙質用の画像をキャンバスに放り込んで、レイヤー作成

2、[レイヤープロパティ]ウィンドウで質感合成をクリックして紙質レイヤーに変換

3、レイヤーを右クリックして「レイヤーマスク」内の「選択範囲をマスク」を選ぶ


こんな感じで下層レイヤーの塗った領域のみに紙目が付くようです。
3番を省けば、キャンパス全体…つまり色を塗ってない領域も含めた下層レイヤー全体に紙目が付きますが、 ここは使用目的に応じて使い分ける事になります。
今回は透過処理の必要のないカラー絵なので、途中から全体に紙目を付けてます。



今度は私が主に使うブラシについて。
(画像に紙質は付けてません)

デフォルトだと描き味が好みじゃないのも多いので、たいていはカスタマイズしてしまいます。
ペンはペン入れ段階では多少の濃淡が出せるものを使うのが好きなので、 カスタマイズして左の画像みたいな描き味にしますが、
落書き段階では、くっきりした感触を好むので、ほとんどデフォルトのままのGペンを使います。


水彩は単色ならベタっと塗れてある程度太さに変化が付けられるもの、 色を重ねるときは多少混ぜたり伸ばしたり出来るものにしてます。
本当はこれで少しだけぼやけたものだと理想的なのですが、 ちょっといい感じのブラシが出来なかったので、今回はこれで描く事にします。


エアブラシはうっすらと色が乗るものと強く色を重ねてしまうものを良く使います。
(右の画像のはうっすらと乗る方のブラシ)

うっすらと色を重ねるときは水彩の濃度を極端に下げて塗るか、エアブラシで薄く色を重ねます。
また、ハイライトなどで水彩だと上手くくっきりと塗れないときに強めのエアブラシやペンを使ったりもします。


他にも気分で使い分けるブラシはありますが、 とりあえず紹介はメインのものだけということで。^^;
あと、今回ざらつきペンは使ってませんが、 手描き風味を出したい時には、こういうにじんだ感じのペンをよく使います。



ラフ画第1段階。
時間をかける前提で描く時は、同じテーマで何パターンか構図を描いてから決めるので、だいたい30分、長い時で1時間かかります。
(今回は無難に30分)


ただの立ち絵なら30分以内くらいで次の第2段階くらいの質には出来ると思うけど、そういうのは2〜3時間で仕上げる前提で描く時の話。
慣れた構図でサラッと描くときはそれでいいのですが、 10時間くらいはかける前提で考える場合は、焦らず構図段階から入念に配置を決めてます。
体のバランスや向きを何度も描いたり消したりして調節するので、毎回こんな風にガサガサの汚い絵になります。


ちなみに、ここからすでにPCでの作業です。
以前は、手描き→スキャンという流れでしたが、今ではスキャナーを使うのが面倒くさいためこの手順は踏んでません。


また、キャンパスサイズはこの時点で 500×707 です。
落書き段階では、時間短縮のために小さいサイズでサラッと描きます。
数字が中途半端なのは、単に私が白銀比好きというだけの話。



ラフ画第2段階。
ここでは、サイズを 1000×1414(つまり2倍)に拡大してます。


第1段階はただの配置構成で画風とかそのキャラらしさは脳内にしかありません。
第2段階で自分の画風らしさも表現してるわけです。
ついでに、手や服の細かい描写をペン入れ出来る程度までまとめます。
ここの作業にかかった時間は20分くらい。
下の絵から、いくらか変更点はあるけど、基本はなぞってるだけなので時間はそんなにかからないです。



画像を 3000×4242(さらに3倍)に拡大してペン入れ。
色は全て黒でもいいけど、ちょっとこだわりたい時は黒に近い茶色や紺など、場所に応じて使い分けます。
(ペン入れでは明るい色を使う事はまずありません。 これは明るい色の線画に着彩すると線が見えにくくなってしまうためで、 色の薄い線を描きたい時はペンの濃度で調整します)

今回は一応使い分けてるけど、一部使う色を間違えました。
でもまあ、大差はないのであまり気にしない。


服や体のりんかくは、1本の線を1回のストロークで描くか、ちょっとずつ線を重ねて太さの調節をしながら描くか、 状況にによって使い分けます。
ただ、髪に関しては細く滑らかな線を目指すため、なるべく1回のストロークでさらっと描くことにしてます。
(太さの強弱を付けたい時は後から付け足します)


この作業で確か2〜3時間。
横目でムービー見ながら描いてたからなのか、単にデカイから時間かかったかは分からんけど、結構かかってますね…。
レイヤーは体と服、目と眉とタイツ、髪の3つに分けてます。
(タイツは単に描き忘れで、首にもおまけでオプション追加)

顔とか髪の辺りは、色塗り段階で微調整が入りやすいポイントなので、
修正するとき、余計なパーツを消してしまわないよう別レイヤーに分けてます。


あと、これは私がペン入れ段階でよくやる事なのですが、
私のペン入れは少し色が薄くて線も細く、色を塗ると線が目立たなくなってしまうため、
一度、線画レイヤーを複製して、二枚重ねで濃度を調整してから合成する事が多いです。
(もともと黒で描いてるので、色調補正では目立った変化が出ないため、複製で調整)


ところで、ペン入れ段階ではよくあることですけど、ラフ画第2段階に比べて絵が死んでますね。
こっちは服の線が直線的で強弱が少ない感じです。
もうちょっと服を生き物みたく自然に出したかったところではあるけど、
どうせ色塗り段階で気に入らなくなったら、そこで修正入れるので、今はあまり気にしない。



今度は着彩後の予想図。
ここの作業はおおざっぱに塗るだけなので5〜10分くらいで終わります。
これでだいたい頭の中のイメージがアウトプットされました。
脳内イメージだけだと、塗ってみて「何か違う」と感じる事もあるので、ここはきっちり予行演習します。
どうせ数分ですしね。後でやり直しで何十分も消費するよりはいいです。



いよいよメインディッシュの色塗りです。
色塗りはまず、キャラの着彩。
(集中が持続しそうにない時は、面倒くさそうな背景を先に片付けるけど、 たいてい背景は線画も描かずに色だけ当てて後回し)

塗る時は、色が濃く面積の広い色を優先する事が多いです。
(私の場合、濃い色→薄い色で色を調整する方がやりやすいため)


服の濃い部分→順次、服の薄い部分→髪→肌→装飾・模様


大体こんな手順ですかね。
濃い色という意味では、今回、スカートの黒が優先されるはずですが、 上着の胸や肩のあたりの黒いラインは装飾・模様に当たるので、この服の場合、黒の優先順位は低くなります。


そんなわけで、まずはざっと上着の下地を塗ります。
色のバランス調整の都合上、背景のラフは一応視覚化したままにして塗ってます。
この状態だと色のバランスは悪くないと思うけど、ここから影が入るので多分濃くなります。
また、この下地の時点で軽〜く明暗を付けてます。


ちなみに今回、使う色を分かりやすいよう右に置いてますが、普段はこんな事はしません。
カラーセットにこんな感じのグラデーションを用意して、それを使って塗ります。


ブラシは水彩系がメインです。
(ほとんどの部分は1種類のブラシで塗ってしまうため、 自分好みの感触になるよう、ある程度カスタマイズしてます)

ただ、わずかに色を乗せたいときや細かい描写を挟みたい時にはエアブラシやペンも使います。
水彩ブラシの濃度を下げて薄く乗せる事も多いです。


ブラシの調整は基本的に「ブラシサイズ」と「ブラシ濃度」のみで塗り、 他は固定して使うため、カスタマイズ段階で、ある程度理想的な描き心地を目指す必要があります。



一旦、邪魔な背景を切って本番着彩。
大雑把に影を付けて、丁寧なタッチになるようにじっくり塗って、最後にハイライトを加えて立体感にアクセントを付けます。


ここで気を配ってるのが影を付ける時のグラデーション。
一旦濃い色で影をベタっと塗って、
1段階薄い色で内部をうっすらと塗り重ねて伸ばして、下地の色となじませます。
(水彩にあるような際(きわ)のたまりを擬似的に表現)


この辺の表現はブラシの水彩境界設定をいじっても出来るけど、
全部に水彩境界を付けたいわけでもないので、ここは自力で表現。



ひと通り塗り終わるとこんな感じです。
この時点では服の色が濃く見えますけど、終盤に上からホワイトをかぶせるので、その前提で濃いめに塗ってます。



最後に、はみ出た部分を消しゴムで消します。
私は、線画を全部閉じた状態でくっきり描くのに抵抗を感じるので、選択領域とか高度な技は使わないよ。
ここまでだいたい45分。
そのうち10分弱が消しゴムがけ作業だから、他の方にはこのやり方はあまりお勧めしない。
主に、時間を無駄にしてもいい方用です。



同じ要領でガシガシ塗って、キャラと背景が塗り終わりました。
背景はあまりこだわらない性格なので、線画を描かずに進めてしまうことも多く、 たいてい色当てしたレイヤーで上から塗り重ねてちょっとずつクオリティを上げてます。


ついでに、スカートの下にレースを付けました。
ここはレイヤーの不透明度を60〜70%程度に下げて、下が透ける感じにして、 白や薄いグレー系で塗っていきます。
今回はレースを何枚か重ねてる感じにするため、レイヤー2枚でレースを表現して、 さらにもう1枚レイヤーを用意して、くっきりとした白で細かい描き込みを加えてます。


あと、髪型が少し変だったので、髪の線画を一部直して塗ってます。


ここまで、キャラの着色に4時間、背景と花に2時間。
残るは近景の描き込みですが、すでに計10時間ほどに達していて、やる気をなくし始めてます。



一旦コーヒーブレイクして、やる気を取り戻す。


背景の上部にグレーを乗せて、雪を降らせました。
(白背景に雪をまぶしても目立たないため、グレーを乗せます)

雪は白の斑点を散らした後、薄いエアブラシで斑点を少しぼかします。


ついでに、上から薄〜〜く広範囲に白のエアブラシをかけて、キャラと背景の明度のバランスを取ります。
エアブラシをかける前が晴れの色合いなのに対し、こっちは雪で曇ってる感じを簡単に表しています。



近景に花を描き加えます。
最初は簡単にシルエットを描いて、少しずつ細かく描き加えていきます。
ちなみに、背景の氷もだいたいこんな手順です。


植物や氷など、実在するものは写真から特徴を掴んで適当に描いていきます。
これは氷の花にしては透明感が足りないですけど、雪や樹氷に近いイメージということでここはひとつ。



これでようやく描き終わりました。
私は背景が苦手なので、そちらは簡略的に描く程度にとどめてしまうのですが、 それでも立体感や遠近感を出したいときは、近景・中景・遠景を意識して描くと、割とそれっぽくなります。
(この絵だと、遠景は雪でしか表現できてないですけど)

また、遠くにあるものを不明瞭にして描くのも、ちょっとしたエッセンスになります。
(逆に近景をぼかすのも写真ぽくて良いかも…)


ここまで計12時間。
このキャラは地味に細かい描き込みが入るので疲れます。


ここまで読んでくださった方もお疲れ様でした。




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