■表情の特徴と描き方■


ここでは、表情の特徴・描き方について説明したいと思います。


顔は一般的な漫画・キャライラストでは、最も描かれることの多いパーツです。
そして、表情はキャラの感情を表現する上で最も重要な部分であり、その表現をどこまで出来るかが絵描きの腕の見せ所とも言えるでしょう。


この表情についても、考え方や特徴の付け方に個性が出るかと思いますが、私は表情をある種の記号と考えています。
「この表情だったらこういう形、こういう歪め方」とパターン分けしてしまった方が描き方を決定しやすいですし、 多彩な表情も単にそのパターンが多いだけだと思っています。
この考えについては、異論を持つ人の方が多いかと思いますが、単に私個人の考え方と捉えていただければ幸いです。
……、説明する上で、記号化してしまった方がまとめやすいという本音もあったりします。(マテ



まずは、ノーマルな表情から。
ひとまず軽くニコつかせてはいますが、これは口だけ笑ってる状態で、口を変形すれば簡単に別な表情になったりもします。
口だけでなく、眉も変えれば、表情のバリエーションもそれなり増えるでしょう。
とはいえ、無表情に近い状態なので、「少しムッとする」「何か悲しそう」など、感情を弱めに表現できるくらいでしょうか。


最初の絵から、眉だけ変えてみます。


目や口がノーマル、無表情に近い状態で眉を変えた場合、そのキャラの持つ印象が伝わります。
「このキャラはこういうキャラ」っていう性格を伝える上でポイントになる感じでしょうかね。
この場合、左は自信なさそう、頼りない、優しそうなどの印象を与え、右は小悪魔、自信家、いたずら好きといった印象を与えるかと思います。


今度はもう少し変化を少なくしてみます。
左は最初の絵、右は眉のカーブをあまり付けずに描いたものです。
これだけでも多少の印象の違いが出るのが分かるでしょうか。
私の場合だと、ノーマルでは眉のカーブを上まつ毛のカーブに沿うような感じで描くことが多いので、だいたいこのあたりのカーブで落ち着きます。
左は明るいキャラ、あっけらかんとしたキャラ、右は冷めたキャラ、感情をあまり表に出さないキャラで使い分けてます。



さて、本格的に表情の描き方の説明に入りましょう。
上の段の説明が、喜怒哀楽の「楽」とするなら、ここでは「喜」の説明になります。
これは「微笑む」ときの表情ですね。
もっとニッコリと笑うときは目を閉じさせてしまうのですが、それについては説明不要と思うので、今回はこの「微笑み」で説明します。


人が笑顔の形を取るときは「目が細くなる」「頬や口が持ち上がる」「下マツゲも持ち上がるように歪む」といった特徴が出ます。
漫画絵だと、リアル路線でない限り、頬についてはあまり表情ごとの変化を付けることはないと思うので、目・眉・口の描写で伝えることになります。
ですが、頬周辺の筋肉に力が入るのは笑顔の主な特徴でもあるので、そこは意識しておいた方がいいでしょう。


さて、では具体的な描き方について。 まず、口については端を持ち上げればいいだけなのですが、ここが他の形だと笑顔にはなりません。(そりゃそうだ
目については、ノーマルのままでもいいのですが、ちゃんと笑みを表現したいときは下まつ毛のカーブの描き方を変えます。(右絵矢印)
上まつ毛も一応カーブのかけ方を矢印で示しましたが、これについては単に上まつ毛をノーマルより下げて描くだけでも問題ありません。
まぶたとまつ毛の間隔は開けた方が自然に思えるので、今回は開けてます。
眉と上まつ毛の間隔はそのままでいいので、こちらも上まつ毛と同じくらい下に描きます。(ほんの少しカーブを調整してます)
眉やまぶたは「脱力」を意識すると良い感じに描けるかと。


今度は下まつ毛を歪めずにそのまま描いた場合の笑顔です。(右絵。左はもとの絵)
左が自然で優しい表情なのに対し、右はどこか冷めた印象を与えます。
なので、見下しや、感情の欠けた感じを表現したいときには右が効果的です。
ちなみに右の絵は、見下し・余裕感を出すために眉のカーブも変えてます。


自信ありげだったり不敵な笑みを描きたいときは、眉を吊り上げます。
この場合、眉に力が入っていることになるので、まぶたも少しだけ力を込めた感じに調整してます。 また、ここでは自然な笑みではなく形だけの笑みを作っている方向で考え、下まつ毛はそのまま描いてます。
下まつ毛については、いわゆる「ドヤ顔」では笑みの形に歪めた方がドヤっぷりを伝えやすいとも思いますし、ケースバイケースですかね。
自然な笑みと形だけの笑みとでは頬の力の入る部分が異なるので、リアルを追及する方はそこも考慮するといいかもしれません。



次は「怒」です。
人が怒るときは、眉やその周辺に力が入ります。
左は冷ややかさや冷静さを含めた怒り・敵意、場合によっては真剣さを示し、この場合は力はそれほど強く入れません。
明確な怒りを表す時には、眉間のしわが深くなります。
また、語気が強まる傾向も出るので、口周辺にも力が入ることになります。


怒りの程度によって、眉を吊り上げる、歪ませる、目に食い込ませるなどパターンを変えると、微妙な違いが出てきます。
まぶたも眉に合わせて歪ませたり、目つきを鋭くしたりするのも効果的です。
人によっては、逆に目を大きく見開いてグッと力を込めるように怒りを表す場合もあるので、ここもケースバイケースと考えた方がいいでしょう。


強い苛立ちや憎しみなどを表現するときは、顔全体を強く歪めます。
また、眉間のあたりを反り返らせるように眉を歪めた場合、他のパーツが歪んでなくても嫌悪感を表現しやすくなります。


※ちなみに、顔が大きく歪むときは、本当なら顔の輪郭も調整した方がリアルなのですが、今回は頬や顎の輪郭はそのままで使い回しています。
ゲームの顔グラフィックなんかだと、ほとんど目・口・眉だけで表情を変えるので、それでもいいのですが、 漫画などのように、顔の一つひとつをきちんと描くなら、ここも配慮してもいいでしょう。
(口を大きく開けるときは顎を少し下げる、頬を膨らませてちょっと怒ってる様子を示すなど)
あと、今回影付けはしてませんが、感情の表現の仕方によっては光の当て方・影の付け方も重要になると思います。



最後に「哀」の描き方。
悲しむときは筋肉にさほど力が入らず、眉や口がハの字・への字に引き下げられます。
下唇や目の辺りは多少力が入るでしょうかね……。
けど、口が笑ってても悲しみを伝えることはできるので、この感情は主に目や眉で読み取られることが分かります。
「哀」を表現する際、まつ毛やまぶたを歪めるように描くのですが、怒りとは少し違うので、違いに注意しましょう。


悲しみの度合いを強めるときは、やはり顔全体の歪みを強めることになります。
この場合だと、目やその周辺に力が入りやすいでしょうかね。
これは涙が出るのをこらえようと力を込めると考えると、表情が掴みやすいかもしれません。
また、こらえる時は口もキュッと締めるので、口、場合によっては歯にも力が入ります。


今回は描いてませんが、悲しみと別に、ある種の嫌悪感を含むこともあります。
そのときは、怒りの場合と同様、眉を歪ませて若干吊り上げると、それっぽくなります。



ひとまずここまで。
ここで描いた表情は、あくまでパターンのいくつかにすぎず、バリエーションは他にもたくさんあります。
とはいえ、ツボの押さえ方はだいたい分かったと思うので、あとは想像の幅を広げて表情パターンをガンガン増やしていきましょう。
それから、実際の表情と漫画絵独特の表情の表現での食い違いというのも実はあったりするので、 そこは他の人の漫画やイラストを参考にしながら。「どう描けばその感情が表現できるか」を考えてみてください。
蛇足ですが、筆者はデフォルメが大の苦手です。




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